1. |
表紙
03:03
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2. |
予言'99
04:08
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教室の隅の方で
聞き耳を立てる幽霊
気取られぬようにただ、ただ
息を殺して過ごしていました
大昔の大予言によれば
今月で人類は滅びるらしい
夕飯の時見た 胡散臭いテレビの中で
誰かが言ってた話
校庭の隅の幽霊
校舎の裏側の空見てた
世紀末 夏の午後
絵日記は今日も書く事がない
巨大隕石の衝突とか
恐怖の大王の襲来とか
行き詰まったゲーム
リセットするような
破滅を待っていた
笑わないでよ!
明日も この先も
同じ毎日が続くなら
いっそ この街に
隕石の雨を 降らせておくれ
400年前の大予言よ
憂鬱な日々を壊してよ
夏の夜 ワクワクするような
ぬるい破滅の足音を
待っていた・・・
打てど届かないメーデー
99年夏の亡霊
未だあの夏に囚われたまま
校庭の隅を徘徊している
アンゴルモアも七人の天使も
結局未だに現れぬまま
おかげさまで僕は今日もこうして
下らない思考囚われている
7の月巡る運命
校庭に墜ちる隕石を見た
世紀末 夏の午後
遠巻きに聞いてた喧騒
遠く海の向こうで痛ましい事件が
起きても胸が痛まないように
他人事のように世界の終わりに
なにかを期待してた・・・
わからないでしょう?
明日もこの世界が
当たり前に続いていくことを
願い叶うならいっそ
今日で全て終わらせておくれ
400年前の大予言よ
退屈な日々ぶっ飛ばしてよ!
教室の隅 膝を抱えて
ドキドキするようななにかを
待っていた・・・
都市伝説の予言はいつも
大事な所だけ外れてしまって
そのたび僕は今でも思い出すんだ
あの夏のことを・・・
わからないでしょう?
明日もこの世界が
当たり前に続いていくことを
願い叶うならいっそ
今日で全て終わらせておくれ
400年前の大予言よ
退屈な日々ぶっ飛ばしてよ!
教室の隅、校舎の裏で
夢の中で、テレビの前で
笑わないでよ!
明日も この先も
同じ毎日が続くなら
空欄だらけの絵日記は
もう書かなくていいの
400年前の大予言よ
憂鬱な日々を壊してよ
夏の夜 ワクワクするような
ぬるい破滅の足音を
待っていた・・・
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3. |
7月のカレンダー
04:54
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部屋の壁に吊るされた
数字ばかりが並ぶカレンダー
ただ一つ、朱色の丸印は
1週間前の日付
「絶好の行楽日和です」
「カップルで賑わいをみせてます」
何気なくつけたテレビからも
急き立てられてるような気がして
海に行く約束もカレンダーの
7月のページと一緒に
破り捨てられてもう見当たらない
空白の8月が悪夢のように
飽きもせずに まわる まわる
暑いだけの季節に
人も 街も 君も 何故に
こんなに色めき立つ
焦る気持ちも暑さに
かき消されてく
焦燥感に駆られて
繁華街に出てみても
今更 何も変わらない
孤独が 増すだけ
夏が来て周りのみんなが
少しずつ大人びてくのを
視界の端に捉えながら
何も感じないわけ無いけど
「明日やればいいさ」が31回
積み重なって8月がやってくる
君との距離縮められるかもなんて
思ってた7月が悪夢のように
朝も昼も夜もこんなに
騒がしい季節に
捻ねた僕の心なぜに
こんなに寂しくなる
後悔もセミの声に紛れ消えてく
海に行く約束もカレンダーの
7月のページと一緒に
破り捨てられてもう見当たらない
空白の8月に何を書こう
海にゆく約束はカレンダーの
7月のページと一緒に
破り捨ててもう忘れてしまおう
今年の8月は始まったばかり
飽きもせずに まわる まわる
暑いだけの季節に
人も 街も 君も 僕も
こんなに浮き足立つ
焦る気持ちと暑さで
まどろむ頭で
8月のカレンダーに
丸を書き込む
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4. |
夕立
04:31
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午後の予定は
急に立ち込めた雨雲に 飲み込まれ消えた
今はこれを理由に 少し考え事を
この雨が上がるまで
慌てて取り込んだ洗濯物と
湿った土の匂い
縁側に腰掛けて
水滴の行方をなぞる
通り雨 空と私の隙間を埋めて
この空のような 心を満たして
騒々しく 屋根を打つ音に合わせて
指先を遊ばせたら
雲間から覗く虹を待とう
口笛でも吹きながら・・・
拙い思考を紡げど
鳴り止まぬ雨音に 邪魔されて消える
濡れたアスファルト 裂くタイヤの音
耳を傾け ぼーっとしてると
こんな午後も悪くないかな なんて
まとわりつくような生温い空気
鼻くすぐる雨の匂い
この雨が上がったら
水滴が彩る街へ
通り雨 見慣れた街並み飾り付けて
雨雲のような心 きらめかせて
西の空わずかに覗いた
太陽がこの街を照らしたら
天気雨が彩る街を行こう
鼻歌でも歌いながら・・・
通り雨 空と私の隙間を埋めて
心を満たして
西の空 わずかに覗いた
太陽がこの街を照らしたら
天気雨が彩る街を行こう
傘などささずに
騒々しく屋根を打つ音に合わせて
指先を遊ばせたら
雲間から覗く虹を待とう
口笛でも吹きながら・・・
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5. |
祭囃子がきこえる
04:48
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ああ やることもないから
窓の外なんか眺めてたら
おあつらえ向きに現れた
綿菓子みたいな雲に誘われ
ここに一人立っていたのです
揺らめく陽炎に 距離感を奪われて
熱に浮かされた頭では
これが夢か現実なのか
区別がつかないのです
蝉の声も ベタつく肌も
すべてがまやかしのように
向こう岸から僕を誘う
祭囃子がきこえる
目を開けたまま
真昼に見た夢は
瞬き一つできっと何処かへ
消えてしまうんだろう
音の鳴る方へ
袖から伸びる色づく肌の
意味も知らないままで
まどろむ午後に
耳を澄ませば
祭囃子がきこえる
楽しげな音に惹き寄せられた
人波の声の中で
まどろむ午後に耳を澄ませば
ほら
蝉の声も ベタつく肌も
すべてがまやかしのように
町外れから 君を誘う
祭囃子がきこえる
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6. |
できれば10代の頃に
03:34
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田んぼに水が張ったのは
つい昨日の出来事だったのに
いつの間にやらセミが鳴き出して
湿た空気は体にまとわりつく
小学校の夏休みは
永遠と思えるほど長かったのに
どうして今はこんなにも
季節は早く過ぎゆくの ねえ、
自覚もないまま育って
どうやって大人になったのか
すら覚えてない
まるで中学校から眠り続けていたみたい
あのころやってたゲームでいえば
中盤あたりだと思ってた
ボタンを押し続けてただけなのに
まさかもうエンドロール・・・?
嗚呼 捨ててきた時間が
今更惜しくなって 嗚呼
ねえ、君はそうじゃないの?
サラリーマンにだけはなりたくないって
あれだけ言ってたのに
頭を下げて必死に嘘までついて
サラリーマンになりました
おまけに内定出たときは
祝杯なんてあげちゃってさあ、
情けないなそんな贅沢な悩み
言うつもりなんかないけど
最近じゃ流行りもわからない
流行りがあるかどうかもわからないが
ラジオから流れてきた新曲が
僕の心を動かした
泥臭くてどこか懐かしくて
少し前向きな気持ちになれたんだ
でもできれば10代の頃に出会いたかったなぁ
なんて
嗚呼、今の暮らしに不満なんかは特になくて
でも違う生き方選んでたらなんて
あの頃時間はゆっくり流れててて
なんにだってなれるって思ってた でも
卒業アルバムに書いた
将来の夢がどうしてだか
思い出せないんだよ
同じことを繰り返す
日々にもずいぶん慣れましたが
このまま終わるのかなと思うと
少しだけ足がすくみます
嗚呼 捨ててきた時間が
今更惜しくなって 嗚呼
ねぇ、君はそうじゃないの?
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7. |
月曜の海
05:02
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憂鬱を乗せて揺れる電車の中
乗客はまばら
いつもと逆側のホームから
乗り込んで何処に向かうの?
目的地もない 大した理由もない
ただ気がついたら ここに座ってた
毎朝見てた向かいのホームの男女が
あんまり楽しそうに笑うから
なんだか 嫌だな
疲れたな なんてぼやいたら
塞き止めてたなにかが
狭い車内の中 溢れて・・・
雲間から覗く光が私を責めても
ガラス窓は今を切り取っていく
パノラマみたいに
「今日だけだから」と
逃げ込んだ電車の中
乗客はまばら
着信の入った電話の電源切って
窓の外をずっと眺めてた
こんなことして明日から
なにかが変わるわけじゃないのに
そうだ このまま
海でも見に行こうかな・・・
見え透いた明日と今の自分から
逃げるように
電車は海へと向かって走る
鈍く揺れながら
今日だけは 今だけは
私を許してよ
見え透いた明日と今の自分から
逃げるように
電車は海へと向かって走ってゆくの
雲間から覗く光が私を責めても
ガラス窓は今を切り取っていく
パノラマみたいに
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8. |
真夜中の恐竜
04:00
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物騒なイメージが
頭の隅に降って湧いてきた
薄汚れた犬だけが
「アイツが来るぞ」と吼えている
電気椅子に腰掛けて
醒めない悪夢を見ている
祈ろうと手を合わせても
神様の名前も知らない
僕の頭の中の恐竜が
街を踏み潰して歩いていく
壊せや壊せ
王様はまだ眠りの中
夜が明ける前に
撃ち落してよ
答えはもう知ってる
ずっと前から知っている
手を上げられないまま
教室の隅でくすぶっている
夜が明けるまで歩いても
この街から出られやしないんだろう
高架下破れた新聞の
記事も世界を呪っている
午前三時発の汽車に乗り
星もくすんだ空を駆ける
走れよ走れ
神様もまだ知らない場所へ
見つからないように
口を閉じてよ
もう全部捨てたいな
踏み潰して捨てたいな
ビルの谷間に恐竜の尾が
たなびくのが見えた
僕の腹の中の怪物が
嘘を飲み下して育っていく
まだ誰もいない
丘の上から街を見下ろして
僕の頭の中の恐竜が
街を踏み潰して歩いていく
さあはじめよう
この街はまだ眠りの中
夜が明ける前に・・・
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9. |
生活
01:45
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10. |
日記
04:41
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春はまだ遠く
吸い込む空気が肺を刺す12月
昨日とよく似た形の夕日が
平たい積雲の裏を通り過ぎた
17時を告げるメロディーと
児童の帰宅を促すアナウンスが
橙色の街に 深く 深く
染み渡っていた
江戸川沿いの土手の上から
夕刻の街を見下ろすと
幼かった頃の記憶が
まるで昨日のことのように
蘇ってくる
特別な日も なんでもない日も
間違いを犯した日も
ここからの景色は変わらずに
いつもただ そこにある
僕らは息をする
吸い込んだ毒で肺を汚しながら
呼吸を続ける
他人の目を気にしながら
僕らは息をする
両手に余る疑問に怯えながら
適切な距離を探りながら
一つ一つ確かめながら
僕らは息をする
呼吸を続ける
駅からの帰り道
かすかに聴こえてくるピアノの音
いつも同じところで躓いて
繰り返し 繰り返し
同じフレーズをなぞる
下校の途中に
こっそり餌付けをしていた飼い犬が
突然いなくなった日のこと
家出をして
帰り道がわからなくなった日のこと
転向していった友達のこと
昨日のこと 今日のこと
今 生きているということ
沢山の文字の中の
忘れてしまったこと
なんでもないこと
あの日も同じ夕日を見ていたこと
僕らは生きている
少しずつ踵をすり減らしながら
鼓動を続ける
満員電車に揺られながら
僕らは生きている
パンを食べながら
転んだことを恥じながら
一歩ずつ歩みを進めながら
僕らは生きている
鼓動を続ける
しんしんと深まる冬の気配に
息を殺し身を潜めた
太陽は西の空に消え
あたりには夕闇が迫っていた
家々に明かりが点り
家路を急ぐ車のヘッドライトも相まって
まるで星空を写し取ったようだ
私もあの灯りの一つなのだ
冷え切った空気を吸い込むと
心臓は少し鼓動を速めた
僕らは息をする
取り留めの無い冬の日記
私が 今生きていた証
僕らは生きている
なんでもない日常に
必死にしがみつきながら
鼓動を続ける
膝を着いて祈りながら
僕らは生きている
昼寝をしながら
無難な答えを選びながら
忘れたことを嘆きながら
本を読みながら
来た道を戻りながら
僕らは息をする
譲れないものを懐に隠しながら
呼吸を続ける
指を指されて笑われながら
僕らは息をする
誰かと手を繋ぎながら
夕日を見ながら
笑いながら 忘れながら
僕らは息をする
呼吸を続ける
僕らはペンを取る
今日の日をまた
いつか思い出すために
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11. |
幽霊団地
04:25
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駅前に広がる巨大なショッピングモール
昔はただの空き地だったのにね
また新しいマンションが建つらしいよ
そういえばあの辺でよく遊んでたっけ
街の外れは相変わらずで
記憶の中の古里のまま
見慣れた街並み 眺めて
君を思い出すよ
「幽霊が出る」なんて噂
たてられて君は怒っていたよね
今になって見てみれば
ただの古びた団地なのに
「幽霊が出る」って噂のある団地
今はもうそこにいない君を
見かけた気がした
大きな道路が開通して
ちょっとずつ変わった生活
ただ2、3年ばかり離れただけで
浦島太郎みたいな気分になるよ
回転遊具のない公園
クリーニング屋になった駄菓子屋
に集まった仲間ももう
時は経ち今は散り散りになった
街の外れ無機質な外観
寂れた雰囲気が怖かった
だけど君がいるから
何度も遊びに訪れたよ
この街から出て行った人たち
この街に残った人たち
君もどこか 名も知らぬ街で
元気に暮らしてますか
瞬きする間に姿変えてく街
今はもうここにいない君を
不意に思い出した何故かな
「幽霊が出る」って噂のある団地
思い出の中 微笑む君は
あの団地に住む幽霊だったのかな
瞬きする間に姿変えてく街
今はもうここにいない君を
不意に思い出した
「幽霊が出る」って噂のある団地
今はもうそこにいない君を
見かけた気がした
気のせいかな
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12. |
余白
04:54
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溢れ出たため息を風に溶かして
指先でかき混ぜる
痛いの痛いの飛んでけ
ズルして誤魔化して
また春が来たよ
気が狂ってしまいそうだ
冷たい 冷たい 水の中で
息継ぎするように
日々をやり過ごしている
知らない 知らない人たちと肩を並べて
今日はなにをしようかな。
零れ出た言い訳を唾に溶かして
傷口に塗りたくる
瘡蓋剥がした跡ヌラヌラ煌いて
また朝が来たよ
いっそ狂ってしまえたら
いらない いらない
と捨てたものが今じゃ欲しくて
欲しくてたまらないよ
消えない 消えない
傷もいつか僕の肩に
寄り添ったりするのかなぁ
破り捨てたページを拾い集めて
胸の奥にしまって歩いていこう
知らない 知らない
明日のことなんて知らない
知らない事だらけだ
今日はなにをしようかな
明日は 明後日は
いらない いらない
と捨てたものをいつだって
思い返して遠回りするけれど
知らない 知らない
ことに今日は出会えたよ
今日はなにを書こうかな
なにをしようかな
今日はなにをしようかな
なにが起こるかな
明日はなにをしようかな
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13. |
裏表紙
01:52
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